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研究組織

公募 A03班(平成26-27年度)

研究組織

公募 A03班(平成26-27年度)

少数のタンパク質モーターによる神経細胞オルガネラ輸送の協同的メカニズムの解明

氏名:
林 久美子  HP
機関:
東北大学・工学研究科
専門分野:
生物物理学、非平衡統計力学
役割分担:
神経細胞に関する理論と実験

研究の目的

神経細胞軸索では、ミトコンドリアやエンドソームなどのオルガネラ(細胞小器官)は、レールである微小管に沿って少数のタンパク質モーターに輸送されます。in vitroの1分子実験でモーターの運動(速度や力等)は詳細に調べられてきたものの、細胞内オルガネラ輸送の本来のメカニズムは、ほとんど分かっていません(例えば、細胞内では何匹のモーターが協同でオルガネラを輸送するのか?モーター数と力・速度の関係は?など)。輸送中のモーター数が分かると、複数モーターの力・速度との相関から輸送メカニズムを解明できます。これまでの先行研究では、光ピンセットを用いモーターのstall力(=モーターを停止させるのに必要な力)を測定することで、細胞内でオルガネラを輸送するモーター数が測定されてきました。しかしながら、オルガネラの形状や硬さなど、光ピンセットの使用には制限があるため、測定対象はごく一部のオルガネラに限られています。私たちは容易に蛍光観察できる多様なオルガネラを対象に、新しい揺らぎ解析の方法から輸送に関与するモーターの力と数を非侵襲に測定することを目指します。

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少数性転移を起こすコア反応モチーフの解析とその探索

氏名:
斉藤 稔  HP
機関:
東京大学・総合文化研究科
専門分野:
生物物理学
役割分担:
少数分子反応系の理論解析

研究の目的

特定の化学反応系において、分子の数が少数になると新しい振る舞いが誘起されるという少数性現象が理論的に報告されてきました。しかし生体内反応でこういった現象が発見された例は少なく、生体機能との関連も明らかにされていません。本研究では、生体内における少数性現象の発見と理解を目的として、少数性現象を引き起こす必要最低限の反応ネットワークモチーフ(コア反応モチーフと呼びます)がどのようなものかを理論的に解析していきます。こういったコア反応モチーフのリストアップと解析を通し、少数性現象の基礎理論の構築を目指します。また、ここで見いだされたコア反応モチーフを生体内反応のデータベースから網羅的に探索することで、少数性効果と関係しうる生体内反応を列挙していきます。該当する反応において、少数性効果が生体機能として用いられている可能性があると期待されます。また、コア反応モチーフと付随する少数性現象の理解が深まれば、in vitroにおける少数性効果の再構成が容易になると期待されます。

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生体高分子が化学反応ネットワークに与える微小空間効果の解明

氏名:
市川 正敏  HP
機関:
京都大学・理学研究科
専門分野:
非平衡ソフトマター物理
役割分担:
モデル細胞の実験と数理モデル

研究の目的

生物を構成する最小単位として細胞を見るならば、その微空間で起こる生化学反応は生命現象の根幹を為していると言えます。最近、細胞サイズのリポソーム(膜小胞)や油中水滴、マイクロ流路などを利用した微小反応場において、生化学反応が試験管サイズのバルク溶液条件と異なっているという報告がなされています。反応の種類も条件も様々である事から、そのメカニズムを統一的に断じる事は容易ではありませんが、マイクロサイズの容器で相対的に広くなる表面の効果や、溶液を封入する際の生体分子の少数性が関わっている事を強く示唆する結果が多くあります。本研究では、"微小空間特異的に形成される構造と、それが化学反応に与える物理的効果"と"DNA分子が微小空間に取り込まれる時の特異性"の2つの課題にフォーカスして、そのメカニズムを解明します。この2つの切り口を通じて、生命が何故、細胞という微小サイズの反応場を特に好んでいるのか、という問いに答える事を研究全体として目指しています。

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細胞分裂時のゲノム分配における1分子性のモデル研究

氏名:
鈴木 宏明  HP
機関:
中央大学・理工学部
専門分野:
生物物理、BioMEMS
役割分担:
細胞モデリング

研究の目的

真核細胞では、細胞分裂において多様な特殊化したタンパク質が複雑巧妙に働き、複製したゲノムを正確に娘細胞に分配します。大腸菌などの細菌は精巧な機構を持たないものの、複製されたゲノムはほぼ正確に2つの娘細胞に分配されます。この事実は、ほとんどの細胞が必ず1セットのゲノムDNAを持つことが、生存競争における必須条件であったと思わせます。平成25年度までの研究で、申請者はモデル細胞膜であるジャイアントリポソームにゲノム分子を模擬した巨大分子を封入し、膜が細胞分裂様の変形をする際に、2個の巨大分子が娘リポソームに分配される様子を調べました。本研究では、この内容を発展させ、モデル細胞膜形成の再現性を飛躍的に改善する工夫を行い、模擬ゲノム分子の娘細胞への均等分配が可能となる条件を定量的に調べます。細胞のサイズが小さいことで、特殊化したタンパク質の制御がなくとも、物理的条件のみでゲノム1分子性という特徴が生じ得ることを示します。

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シグナル伝達系におけるゆらぎの生成と伝搬の少数性生物学

氏名:
柴田 達夫  HP
機関:
理化学研究所・発生・再生科学総合研究センター
専門分野:
定量生物学
役割分担:
研究の遂行と統括

研究の目的

細胞の走化性シグナル伝達系は、外部の誘引物質のきわめてゆるやかな濃度勾配を検出し、適切に応答することができますが、微弱でノイズに満ちたシグナルからどのように適切に情報を取り出せるかは生物学が取り組むべき大きな課題です。本研究では、走化性情報処理の鍵となるイノシトールリン脂質反応において生成されるノイズと、その上流から伝搬してきたノイズを解析します。このため、2重レポータ・イメージングを用いた新しいノイズ計測法を確立します。また、反応におけるシグナルとノイズの関係を示す式として以前に提案した gain-fluctuation relation を拡張して、適応反応のようなより複雑な反応や、その時間空間的なふるまいを記述できる理論を構築します。これにより、走化性シグナル伝達系がノイズにどのように対処し、また利用しているのかを明らかにするとともに、他のシグナル伝達系にもあてはまる、確率的な情報処理システムの動作原理を解明します。

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